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ダイスケ日和
〜ダイスケに捧ぐ〜


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病気

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 2001年夏。ダイスケの具合が悪くなった。ヒドイ下痢、しかも血便だったりして、食欲も元気もなくぐったりとしている。医者に連れて行き、薬をもらってしばらく様子を見た。1週間もしたらすっかり元気になり、いつものダイスケに戻った。ちょっと、夏バテでもしたのかな?

 2002年夏。ちょうどお盆の時期に、私は家を出た。何が寂しいって、毎日ダイスケやラブに会えなくなる事だった。ダイスケと一緒に寝なくなって3年ちょっとが過ぎてはいたが、やっぱりダイスケと離れるのは寂しい。ふと、私はダイスケの死に目に会えないかもしれない、そう思ったらたまらなく寂しい気持ちでいっぱいになった。「ずっと元気で長生きするんだよ。」そう言って、ダイスケにギューっと抱きついた。ダイスケはちょっと困った顔をしつつ、私の腕の中でじっとしていた。

 私が家を出て間もなく、またしてもダイスケの具合が悪くなった。去年の夏と同様、下痢、しかも血便が出て元気がない。母親からそんな連絡がきた。が、8月の終わりに実家へ帰るとダイスケは元気が良く、尻尾をブンブン振って私を出迎えてくれた。どこもいつもと変わらなく、いつものダイスケなので安心した。今年もまた、ちょっと夏バテでもしたのかな。そんな程度にしか思っていなかった。

 ところが9月17日火曜日、実家へ帰って驚いた。こないだまで元気だったダイスケがすっかり痩せ細ってしまい、骨が浮き出ているのである。足も弱ってしまい、フラフラしてうまく歩けなくなっていると言う。小屋の前には、ふやかしたドッグフードが沢山残っているエサ箱が置いてあった。ご飯も食べれないらしい。イヤでも、「もう、長くないかもしれい。」そう思ってしまうような姿だった。

 それでもダイスケは、尻尾を振って嬉しそうな顔で私を出迎えてくれた。あまりの弱々しさにショックを受けつつも、小屋のカギを開け、「ダイスケ〜。」と、頭や体を、たくさん、たくさん、撫でてあげた。ダイスケは気持ち良さそうにじっとしていた。体は弱ってしまっているけど、目はキラキラと輝いている。「ダイスケ、ご飯食べなくちゃ。」と、少しずつふやかしたドッグフードを手に取って、ダイスケの口へ運んであげた。するとダイスケは、一生懸命食べ始めた。「エライね〜。」と食べさせ続け、結局、残っていたドッグフードを全部たいらげたのである。全部食べてくれた嬉しさと、不安が私の頭をかすめる。

 ご飯を食べ終えた後、ダイスケは小屋から体を半分出し、私の膝で甘えた。ダイスケは今まで、そういう甘え方はしなかった。それなのに、片時も私から離れたくないとでも言うような感じで、私に体を寄せて甘えるのである。甘えてくれるのはとても嬉しいんだけど、不安でたまらない。ダイスケ、何でそんなに甘えるの?

 その時ちょうど私の携帯電話が鳴り、電話を持って部屋を出た。洗面所の前で振り向くと、フラフラしながらも、ダイスケが嬉しそうな顔をして尻尾を振りながらついて来ていた。嬉しいような悲しいような、ダイスケ、どうしてそんなに離れたくないの?

 電話を切るとダイスケが、洗面台に手をついて弱った後ろ足だけで立ち上がった。そして、キラキラ輝く目で私に訴える。「ここで水が飲みたい!」。ダイスケはそうやって、洗面台についている水道の蛇口から水を飲むのが好きだった。水を飲んでる間、手が滑らないように押さえててあげるのは私だけで、ダイスケはいつも私に、「ここで飲みたい!」と訴えたっけ。もちろんこの日も、きちんと左手を押さえててあげた。そこで水を飲んだダイスケは、本当に満足そうだった。

 そして今度は、私とダイスケがいつも一緒に寝ていた元私の部屋へ入りたがった。一緒に寝なくなってからは、私の部屋へ入るのをイヤがるようになったダイスケが、自分から入りたがったことに驚いた。そして、やっぱり私を不安にさせた。ダイスケ、どうしたの?

 部屋へ入ると腰高窓の所へ行き、窓枠に手を掛けて立ち上がった。そして、ゆっくりと尻尾を振りながら窓の外の景色をじっと見ていた。ダイスケは、そこからそうやって外の景色を見るのが好きだった。そして私は、そんなダイスケの後ろ姿を見るのが好きだった。しばらくしてダイスケは嬉しそうに振り向いた。満足した顔をしている。ダイスケが嬉しそうで私も嬉しいけど、まるで見納めしているように見えて、ますます私の不安は募っていった。

 それから部屋に戻り、ずっとベタベタしていた。両手を広げて、「ダイ!」と呼ぶと、本当に嬉しそうな顔をして私の腕の中に入ってきて、そのままペタンと床に寝そべった。顔を私の膝の上に載せ、尻尾をブンブン振りながら、いつまでもいつまでも甘えていた。そんなダイスケを、私はいつまでもいつまでも撫でていた。

 夕方、ダイスケがずっと私に甘えてるのを見てた母親に、「泊まってけば?」と言われたが帰ることにした。立ち上がると、それまで私が立ち上がる度に不安な顔をしてたダイスケが、いっそう不安そうな顔をして私を見上げた。そんなダイスケの顔を見るとますます不安な気持ちでいっぱいになってしまう。頭をぐりぐり撫で、そのまま家を出た。そしてそれが、私とダイスケの最後になってしまった。


こっから見る景色もサイコーなんだよね。



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