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aicoダイビングのライセンスを取る

−ダイビングライセンス取得奮闘記 in ティオマン島−

OPEN WATER DIVER LISENCE編

INDEX


講習1日目(4月19日) 
 朝、ビーチで日本人インストラクターのアキさんとダイブマスターのライセンスを取得中のロマンスさんに会い、あれよあれよと講習が始まる事になった。ライセンスを取るつもりで来たのだけど、あまりにも突然で、心の準備もままならない。が、後から思えば、「心の準備」なんてなくて良かったと思う。勢いで始められた事は、私にとっては吉と出てるだろう。なぜなら、もし最初に何をやるかを知り、じっくり「私にできる?」なんて考えてしまったら、私はライセンスを取る事を断念してしまったかもしれないから。

 午前中、アキさんの楽しい学科の講習。生徒はアヤと私の2人だけ。ポンポンポンと次から次へと言葉が飛び出し、「退屈」とは無縁の講習である。プラス浮力・マイナス浮力・中性浮力の説明や、水深10mは2気圧で空気の体積は1/2になり空気の密度は2倍になる。じゃぁ、水深20mではどうなる?などの勉強をしたり、水中でのハンドシグナルを覚えたりする。「水中では絶対に絶対に絶対に息を止めないこと。」アキさんは繰り返し言う。何度も何度も言われ、「唾を飲み込みたくなった時はどうすればいいですか?」と聞いてしまったほど。「その位はいいよ。」らしい。

 とても楽しく午前中が過ぎて行く。ただ、「10分間の立ち泳ぎと、水泳200mかスノーケリング300mをやってもらいます。」と言われた事が引っかかっている。言われた時、「え?」と驚いてしまった。ダイビングのライセンスを持っている人はみんな、「泳ぎは関係ない。」って言っていた。そんな事聞いてない。できるかな・・・。


 午後、プールに移り、いきなり10分間の立ち泳ぎ。「できるかな〜。ちょっと心配なんですけど・・・。」とぶつぶつ言いながらプールに入り、バタバタと立ち泳ぎを始める。「ただ浮いてるだけでいいよ。そんなんじゃ、10分間、持たないよ。」と言われるが、これしかできない。「背中で浮けない?」と聞かれ、「浮けません。(笑)」と即答。バタバタもがいてる私に「ちょっとこっちおいで。」とアキさんが言い、背中での浮き方を教えてくれる。「あ、浮いた。」と喜んでいると、「あんまりそっち行くと頭ぶつけるよ。」と言われ、慌てて起き上がり、またバタバタもがいてから背中で浮くという事を繰り返していた。アヤはじっと1ヶ所で浮いているのに、私はあっちへ行ったりこっちへ来たりと忙しい。何とか10分間の立ち泳ぎはクリア。良かった。

 次に、器材の名前を教わり、セッティング方法を教わりながら器材をセッティングする。私は目が悪いので、度付きのマスクを用意してくれた。生まれて初めての器材、何だか不思議な感じがする。プール内の浅い部分に立ち、タンクから空気を吸うためのレギュレーターをくわえ、3人で潜る。タンクからレギュレーターを使って空気を吸うという初めての体験に、一瞬パニくり、すぐに水から出てしまう。何だか息苦しいし、口だけで呼吸するのが落ち着かない。スノーケリングをする時も、口呼吸に慣れるまで少し時間がかかるのだ。一気に弱気になり、「やめたい。できない。」と思ってしまう。あの、学生時代の憂鬱だった水泳の授業を思い出してしまった。「何で南の島に旅行に来てまで、こんな思いしなくちゃいけないんだろう・・・。」が、もう1人の私が言う。「苦手な事の克服方法は、苦手な事を好きになる事。慣れたら絶対楽しくなるんだから、大好きになれるまでやらなくちゃ。ずっとダイビングやりたいって思ってたんだから。」

 その後水中で、「レギュレーターを口から外してくわえ直す」「2通りのレギュレーターリカバリー(口にくわえているセカンドステージを後ろに投げ、右手で確実に探せてくわえ直せる方法。)」「一緒に潜る仲間『バディ』の予備空気源であるオクトパスを使っての呼吸方法」「バディのセカンドステージを交互に使いながら呼吸をするバディブリージング」「マスクに水が入った時のクリアの仕方」「ボートから、海の中へ1歩踏み出すようにエントリーするジャイアントストライドエントリー」「こむろ返しになった時の治し方」「潜降・浮上・耳抜き」「レギュレーターから空気が出っ放しになってしまうフリーフローになった時の呼吸方法」「中性浮力をとるためのフィンピボット」「空気が無くなってしまった時の浮上方法、緊急スイミングアセント」「疲労ダイバーの曳行」などの練習を行った。最初にパニくった以外はパニくる事はなかったものの、水の中にいる事がどうしても落ち着かない。潜っていても、「早く出たいな。まだかな。」と何度も思ってしまう。そして急に不安になり、「苦しい気がする。上がりたい。」「いやいや。苦しくない、苦しくない。」「もう、やめたい。」「いやいや。やめたくない。」「ライセンスいらない。」「いやいや。欲しい、欲しい。」私の頭の中は忙しい。


 夕方、器材のバラし方を教わり器材を洗って、本日の講習終了。かなり奮闘の予感。でも、徐々に水にも慣れてきたし、何と言っても講習は楽しい。かなり不安はあるけれど、笑っている時間の方が多いし、きっと楽しくて仕方なくなれるハズ。さぁ、頑張ろう。

講習2日目(4月20日)
 今日は海での講習。今日の生徒は、アヤと私の他に、日本人学校の先生だ。海へ入る前、「耳抜きしやすくなるから。」とガムをもらい、一生懸命噛む。まず、ショップの所で器材をセッティング。私が借りているブーツはショートのため、フィン擦れしないように靴下を履いた方がいいと言われ履いていると、「妙に靴下、似合うなぁ。」と笑われる。そんな話しをしながら笑い、多少、緊張がほぐれるが、それでもやっぱりものすごく緊張している私。大丈夫かなぁ・・・。

 タンクを背負い、ヨロヨロと前かがみになりながら目の前にある海へ向かって歩いて行く。今日はいきなり海かぁ・・・。不安でいっぱいの私。腰くらいの深さまで入り、バディのアヤと支え合いながらフィンを履き、バディチェックを行う。そして、マスクをしスノーケルをくわえ、スノーケリングで潜降ポイントまで移動する。が、このスノーケリングの時点でかなりヤバイ。口にもマスクにも水が入り、すでに冷静さを失いかなりドキドキ。

 キさんのいるブイまで何とか泳ぎ着き、ヒモにつかまりながら潜降。とにかく「怖い」、この一言に尽きる。広い海の中に沈んで行く恐怖心。耳抜きもうまくできずに焦り、マスクにも水が入ってくる。耳抜きができないと大変な事になるんじゃないかと不安になりながら、マスクに入ってくる水も気になる。そして、海の広さが怖くてたまらない。色々な事が頭の中でぐるぐるし、パニくり出した時、鼻から水を吸ってしまった。と、同時に口からも水を飲んでしまったから、さぁ大変。もう何が何だか分からない。「息ができない。苦しい。死ぬ。」としか考えられない私は大パニックを起こし、「浮上する。」と大騒ぎ。アキさんに肩を押さえられ、「大丈夫。落ち着いて。」とされ、一瞬我に返り、「私、息してる?」と考える。一呼吸してみるとちゃんと呼吸できている。「あ、呼吸できてる。」と思った瞬間、やっぱり口に水が入ってきた。

 その後の事は、自分でもあまり覚えていない。大パニックを起こしている私はアキさんに連れられ、先生とアヤを水底に残し浮上。何も分からなくなってしまっている私は、水中でレギュレーターを外してしまった。すぐにアキさんにレギュレーターを口に入れられ、一瞬、「あ、そうだった。これがないと息できないんだった。」と我に返るのだが、やっぱりパニくったままである。水面に上がってからも、着ているBCDに空気を入れれば浮く事も考えられず、バタバタと暴れ、アキさんを蹴ってしまった。アキさんの「痛っ。」という声でやっと我に返る。アップアップしながら「すいません。」と言う私に、「謝らなくていいから。BCDに空気を入れて。」と言われ、「あ、そうだった。」と気付く。まさに教科書通りのパニックを起こしてしまった私。


 冷静になると、「やっちゃった・・・。」という自己嫌悪感でいっぱいになる。水底では先生とアヤが待っている。不思議な事に、「やめたい。」という思いはなく、「早く戻らなくちゃ。」「ちゃんと潜るからやめさせないで。」という思いだけだった。アキさんは、「大丈夫?どうしたの?行ける?」と優しくてホっとする。そして再び潜降。

 潜降後、昨日プールで練習したレギュレーターリカバリーやマスククリアなどの練習をする。自分がやっている時はそれに集中しているからいいのだけど、誰かがやっているのを待っている間、「海の中にいる。」「何となく苦しいかも。」と余計な事に神経が集中してしまいドキドキし始める。

 最後は水中散歩。まだまだ海の中にいる不安は取り除けないけれど、沢山の魚やサンゴ、そしてみんなが吐き出す泡を見て、「あ、綺麗。」と嬉しくなる。


 浮上後、「ビビるマンに変身したな。」と笑われる。ビビるマン、ここに参上・・・。

 午後、疲労ダイバー曳行の練習ということで、ブイまでアヤに引っ張って行ってもらう。そして、またヒモにつかまりながら潜降。パニックこそ起こさないが、やっぱりうまく耳抜きができない。まず、昨日プールで練習したフィンピボットや緊急スイミングアセントなどの練習をする。緊急スイミングアセントは、一呼吸で息を吐きながら浮上しなくてはならないのに、1回目、途中で呼吸をしてしまいやり直す。

 その後は、水中散歩。午前中よりは少し余裕ができ、「綺麗。」と思いながら泳いでいた。すると、体が勝手に浮上し始め、どんどん浮いて行く。「あ、浮いてっちゃう・・・。」と焦っていると、アキさんが助けに来てくれた。浮上後、「俺の断りなしに浮いてった。」と、また笑われる。


 帰りは私が疲労ダイバー曳行の練習。ビーチまでアヤを引っ張って行く。なかなか思うように進めず、ビーチにたどり着かない。足までつってしまい、アヤと2人で大笑いしながら戻って行った。

 海から上がった後は、プールでの講習。「さぁ、これからちょっと大変です。いっぱい水を飲んでもらいます。」と言われ、「え・・・。何するの・・・。」とドキドキ。講習内容は、「水面・水中でのウエイトとBCDの脱着と装着」「マスクの脱着と装着」「エア切れになった時」「適切なウエイト量」。水中でのBCDの装着にちょっと手間取ったものの、何とかパニくる事なくクリア。器材をバラして洗い、本日の講習終了。あぁ、奮闘・・・。

講習3日目(4月21日)
 アキさんは朝から、先生の講習のためボートダイビングに行っている。なので私たちは、午後、アキさんが戻って来るまでに、教科書の各章の最後にある問題を解いておくように言われている。ロマンスさんとアヤと一緒に勉強する。

 午後になり、アキさんが戻って来た。そして、学科の講習が始まる。今日はダイブテーブルを使っての、潜水可能時間や最大深度、そして水面休息時間などの計算方法を教わる。アキさんの予想以上につまづく私たち。理解したと思うと、急に「あれ?」と分からなくなってしまい、何度も練習問題を出してもらう。そして、最後にペーパーテストを受け、無事、2人とも合格。

 夕方、海で200m水泳を行う。「泳げるかなぁ。何とかなるかなぁ。」とぶつぶつ言っていると、「ゆっくりでいいから。とにかく泳ぎきればいいから。泳げるんでしょ?」と、アキさん。「プールでは泳げますけど、海で、浮く物なしで泳いだ事ないんですよねぇ・・・。」「・・・。」一瞬の間があり、「ロマンス、スノーケリングでついてってあげて。今日の水泳(ロマンスさんの日課)、それでいいから。」とアキさんが言うと、「スノーケリングでいいんですか。」とロマンスさん。「もし本当に溺れてつかまられたら、スノーケリングじゃないとお前も溺れるぞ。」「あ・・・。」そんなやりとりを見ながら「へへ。すいません。」と笑う私。笑ってる場合じゃない。

 まず、アヤと2人で泳ぎ出す。そして、後ろからロマンスさんがついて来てくれる。ゆっくり泳げばいいのに、「流されてる。」と思うとつい必死で泳いでしまい、そして、すぐに疲れ出す。海の透明度がよく、自分が今、どの位の深さの所を泳いでいるのかが分かってしまう。もちろん、足なんて届くわけがない。「深いなぁ。」と思うが、不思議な事に怖いとは思わなかった。それは今までの私には考えられない事で、「海に潜ったからなのかなぁ。」と嬉しく思う。そしてまた、ものすごく体がよく浮く気がして、「海水ってこんなに浮くものなのかなぁ。」とちょっと驚く。が、すぐにこんな事を考える余裕はなくなった。ちっとも前に進まず、どんどん疲れていく。体が重い。そして、疲れてくると息継ぎもちゃんとできなくなる。「苦しいー。死ぬー・・・。」と疲れ果て、「ロマンスさーん、ちょっとつかまらせて下さい。」とつかまらせてもらう。呼吸を整え泳ぎ出すものの、ブイまで行って戻ってくる時にも、「ロマンスさーん・・・」とつかまらせてもらってしまった。そして、ずいぶん先にビーチへたどり着いているアヤ目指して泳いで行くのだが、疲れ過ぎて行きたい方向に向かう事もできない。目の前に大きな岩が見え始め、「よけないとぶつかる。」とは思ったけれど、その岩をよけて行くほどの体力は残っておらず、結局、岩に足をぶつけ「痛い・・・。」と思いながらビーチにたどり着いた。


 アヤとビーチで放心しながら、2回もロマンスさんにつかまらせてもらってしまった事を反省する。「もう少し頑張れたんじゃないのかな。」と思うと情けなくなり、ちょっとへこむ・・・。

講習4日目(4月23日)
 今日はボートダイビング。まず、ショップの所でコンパスの使い方を教わり、行って戻って来る練習をする。それからJettyへ行き、ボートに乗り込む。かなり緊張状態の私は、遠くの景色を見ながらなるべく考えないようにしようとするのだが、ついつい黙り込んでしまう。もう1つのJettyに寄り、ボートにタンクを積込み他のお客さんたちも乗って来る。どんどん緊張していく。「大丈夫かなぁ。ちゃんと潜れるかなぁ。」でも、今日の講習が終わればライセンスが取れるんだ!

 1本目のポイントは『CHEBEH』。ロマンスさんが、「綺麗だし、流れがなくて潜りやすいよ。そこだといいね。」と言っていた場所だ。『CHEBEH』だと聞いて少しホっとするが、私の緊張は頂点に達していた。まず、アキさんが海へエントリー。次にアヤ。そして、最後に私。が、なかなか海への1歩が踏み出せない。ジャイアントストライドエントリーをするのが怖いのではなく、この広い海が怖い。でも、2人が待っている。早く行かなくちゃ・・・。

 エントリーしたものの、今度はそこから動けない。スノーケリングで2人の所へ行くのさえ怖くなってしまった。顔を海の中に入れたくない。でも、「早く行かなくちゃ。」と、スノーケルをくわえアキさんとアヤの待つ場所へ泳ぎ出す。が、水が口の中に入ってきて慌ててしまい、すでに潜降前にビビるマンになっていた。

 潜降し始めると、冷静さを失っている私にはどこまでもどこまでも広がる青い水しか見えず、とにかく、海の広さと深さが怖くてたまらない。そして、やっぱりうまく耳抜きができない。あまりの恐怖感から、アキさんの両腕をつかんだまま離せない。アキさんが離れて行こうとすると顔をぶんぶん横に振り、アキさんをつかむ腕の力がいっそう強くなる。とにかく怖かった。その後、多少は落ち着き、今まで見たこともない海の中の世界に感動もしたけれど、でもやっぱり、緊張していたせいであまり記憶にない。とにかく早く浮上したかった。海の中にいる事が不安でたまらなかった。

 浮上すると安心感からか、「何で私はあんなに怖がってしまったんだろう。」と冷静になり、そして、へこむ。でもまだ、笑ったり冗談を言ったりするくらいの元気はあったけれど。ボートは無人島のコーラルアイランドへ移動する。ここには2匹の犬が住んでいると聞いていたので、アヤと「見れるかな。」と楽しみにしていた。2人で目を凝らしてよく見ていると、真っ白なビーチを1匹の犬が走って行った。アヤと2人で、「いたー!」と喜ぶ。残念ながら1匹しか見れなかったけれど。こんな風に元気ではあるものの、気落ちと2本目の事を思っての緊張感から食欲は全くなく、ほとんどお弁当を食べる事ができなかった。

 昼食後、スノーケリングでコンパナビゲーションの練習をする。ボートから海へ背中から入るバックロールエントリーを教わりやってみるが、なぜか全く怖くなく、フィンを履いているだけでこんなにも浮く事と、綺麗な海と沢山の魚に感動する。アヤと順番にコンパスを腕に付け、20キック進んで戻って来る練習をする。最初、コンパスの使い方を間違え、同じ方向に40キック進んで行ってしまったが、2回目はOK。気が付けば、怖かったはずの海に入る事ですっかり気分がリラックスしていた。ボートに上がるとき思わず、「あー、スノーケリングは楽しい。」と言ってしまうほど。すかさず、「スノーケリングは?」とアキさんにつっこまれたけれど。でも、ここで問題発生。そうじゃなくてもうまく水が抜けない右耳に水が入ってしまった。「別に大丈夫だよ。」とアキさんは言うけれど、これでまた一気に不安になってしまった私。何とか水を出そうと跳ねたり、叩いたり、温かい所に耳を当ててみたりしたけれど、結局水は抜けなかった。

 2本目のポイントは『BATU MALANG』。もう海へ入る恐怖心はなく、スムーズにエントリー。今回は、潜降前に水面で、ウエイトとBCDの脱着と装着の練習をする。無事、クリア。そして、いよいよ潜降。また、ビビるマンに変身する事を恐れていたけれど、今回はずいぶん落ち着いて潜降して行く事ができた。沈んで行く怖さがなくなっている。「今度は大丈夫かな。」と安心し、水中散歩を楽しんでいると、だんだんマスクに水が入り始め一気に落ち着かなくなった。そんな中、マスクの脱着と装着をやる事に。ゆっくりマスクを浮かせていく。が、マスクの中に水が入ってくるととんでもなく怖くなり、マスクを外す事ができない。そして、突然右耳が「じーじー」言い出し、「何の音?」と、あっという間にパニック状態に陥った。そしてまた、「浮上する。浮上する。」と大騒ぎ。やっぱり、その時の事はあまり記憶にない。気が付くとまたしてもアキさんに連れられ、浮上している最中だった。アヤも浮上している。そして、「今日は耳の調子が悪いから、明日、またやろう。」と言われ、1人ボートで待つ事になり、2人は再び潜降して行った。また、やってしまった・・・。

  ボートにいた2人が、綿棒をくれたり耳に水を入れて水を抜いてくれようとするが抜けない。1人ポツンと座っていると、ものすごい恥ずかしさと自己嫌悪感でいっぱいになる。そうじゃなくても小さい私が、さらに小さくなってポツンと座っていると、ボートにいた1人の人が、「ここはいいスノーケリングポイントだよ。スノーケリングやらない?」と声をかけてくれた。一瞬迷うが、少しでも水に慣れた方がいいと思った私は、「やる!」とフィンを履き海の中へ。が、やっぱりマスクに水は入ってくるし、水は飲むし、高い透明度のため海の深さがよく分かって怖くなってしまった。「溺れるー。」と軽いパニック症状を起こし、ボートの人を溺れさせそうになったうえ、「やっぱりやめる。」と、さっさとボートに戻ってしまった。「この2人、何でこんな人がダイビングやってるんだろうってきっと思ってる・・・。」と勝手に思い込み、余計、へこむ。やらなきゃよかった・・・。

 それから少しして、アキさんとアヤが上がってきた。アヤが、「大丈夫?」と心配してくれる。アキさんも、「元気出せよ〜。」と笑う。私は、「はい。」と笑うしかできない。2人に挟まれて座り、ものすごくホっとすると同時に、恥ずかしさと「しょぼん」感で何だか落ち着かず、居心地が悪い。なるべく平気なフリをして2人と話すものの、「どうした?怖くなっちゃった?」「・・・はい。何か、沈んでくー、て思ったら、怖くなっちゃって・・・。」「2日空いちゃったからなぁ。明日もう1回やって、それで終わりだから。潜っちゃえば上手なんだから大丈夫だよ。」と励まされると、また平気でいられなくなってくる。そして、「ダイビング、嫌いにならないでね。」のアキさんの言葉に、押さえていた物がこみあげてくる。涙が出てきそうになり、絶対泣きたくなかった私は「はい。」とうなずくのが精一杯で、思わず顔をそむけてしまった。「泣きそうなのバレたかな・・・。」と思うと余計恥ずかしくなる。あぁ、こんな時こそ海の奥底へ沈んで行きたい。ぶくぶくぶくぶく・・・。あぁ、撃沈・・・。

講習5日目(4月24日)
 今日は、私たちより少し後から講習を受け始めたキタロウとトモちゃんと一緒に潜る事になっている。2人の学科やプールでの講習が終わった後、ショップへ行き合流する。それまでの時間、口呼吸に慣れようと、鼻をつまんで口で呼吸するようにしたり、耳抜きの練習をしていた。そして、頭の中で何度もマスクの脱着と装着をする自分をイメージしていた。とりあえず、脱着さえできれば大丈夫なハズ。

 今日のバディはロマンスさん。バディチェック後、スノーケリングでアキさんの待つブイまで泳いで行く。そして、ヒモをつかみながら潜降。マスクの脱着の事で頭がいっぱいの私は、潜降して行く事や口で呼吸する事、そして、耳抜きの事があまり気にならない。水底でじっと待つ時間もマスクの脱着の事しか考えていないので、すっかり海への恐怖心がなくなっていた。多分、昨日の海よりこのショップの前の海の方が、私にとって安心できる場所というのもあるのだと思うけど。が、やっぱりマスクを外す事はできない。顔にしっかり張り付いている感じのマスクを浮かせたら、どんな勢いで水が入って来るのだろうと思うと外せないのである。多分、自分でではなく、アキさんに外してもらえば大丈夫なのだと思う。そして、装着はできるハズ。マスクを外そうとマスクに手をかけた時に感じる、顔にしっかり張り付いている感覚が怖いのだ。マスクの脱着ができないまま、みんなで水中散歩。「どうしよう。」という気持ちでいっぱい・・・。


 いったん浮上し、アキさんと私だけ再潜降。もう1度、マスクの脱着をやってみるよう言われるが、どうしても外せない。「できる、できる、できる。」と自分に言い聞かせるのだが、どうしてもこの張り付く感覚が怖い。私が外すのを、アキさんがじっと待っている。「外さなくちゃ。」と焦るが、やっぱり外せない。講習初日に思った以来、初めて、「もう、やめたい。ライセンスいらない。」と思ってしまった。

 その後、コンパスナビゲーションの練習をする事になり、20キック進んで戻って来る。これは問題なくクリア。そして、水中散歩。「どうして外せないんだろう・・・。アキさん、どうするのかなぁ・・・。」と思いながらついて行く。どんどんビーチへ近づき、水深が浅くなってくる。このままエキジットするのかと思い、「どうしよう。」と思っているとアキさんが止まり、上を見るように言う。見ると水面が近い。立てばすぐ水面に出られる深さだ。そして、ここでもう1度やってみるよう言われる。「今度こそ絶対外さなくちゃ。」という一心でマスクに手をかけ、そして外す事ができた。やっと、マスクの脱着と装着ができた。「よくできた!」と何度も握手をしてくれ、頭をポンポン叩かれる。ものすごい安堵感。「できた〜。」

 水面に出てから、「明日もう1回深い所でやってね。水深は関係ないから。これから、もう1回、プールでやっておこう。」と言われ、「・・・・え?あ、はい。」とちょっと固まる。やっぱり、今のじゃダメなんだ・・・。そりゃ、そうだよね。確かにアキさんは最初に言っていた。「できるようになるまでやりますから。できないのにライセンスはあげません。そういう意味では、ウチはちょっと厳しいかもしれません。」と。


 プールは塩素を入れたばかりで、塩素のニオイが強い。なので、目を開けないでマスクの脱着と装着をやるように言われる。とりあえず、すぐにできた。でも、「今、ちょっと鼻から水吸ったでしょ。」と笑われた。

講習6日目(4月25日)
 朝、ショップに集合し、みんなで器材をセッティングする。キタロウとトモちゃん、ロマンスさんとアヤと私でバディになる。アキさんに、「潜降したらすぐ、まずアイちゃんのマスクの脱着をやって、その後は、ロマンスとアヤちゃんと3人で水中散歩。いい?もう今日しかないんだからね。やってね。」と言われる。明日、島を出る私に残された日は今日しかない。昨日からずっと、頭の中でイメージトレーニング。考えれば考えるほど、「簡単な事」に思える。どうしてこんなに簡単な事ができないんだろう?不思議でしょうがないし、情けない。地上にいると、「ちょっとくらい水飲んだって死なないよ。」って思えるのにな。

 昨日と同じようにバディチェック後、スノーケリングでブイまで泳いで行く。そして、ヒモをつかみながら潜降。もう海へ潜る恐怖心はない。耳抜きはしにくいが、うまくできないからといって焦る事もなくなってきた。口で呼吸する事にもずいぶん慣れ、あまり違和感を感じない。いつの間にか、ずいぶん水に慣れている。

 水底に着くとすぐ、アキさんと向かい合って座る。「何が何でもやらなくちゃ。」と思っていた私は、さっさとマスクを外す。外してみると「あれ?」、顔にしっかり張り付いていると思っていたマスクはふわっと簡単に外れた。もっと、吸盤のようになっているのではないかと思っていた私は拍子抜ける。ちょっと、「うっ。」とはなったものの、無事、マスクの脱着と装着クリア。そして、これで講習終了。アキさんと握手する手にも力が入る。側で見ていてくれたアヤも手を差し出してくれる。やったー。できたー。嬉しいー!終わったーー!

 その後の、水中散歩の楽しい事と言ったらない。海の中を泳ぐってこんなに気持ちのいい事だったんだ。何ともいえない浮遊感。ものすごく気持ちいい。沢山の魚や綺麗なサンゴ。初めて、リラックスして海の中の様子を楽しむ。そして初めて、「え、もう浮上するの?」と浮上する事を残念に思えた。

 休憩後、「残ったエアでJettyの方に行ってくれば。」とアキさんが言い、ロマンスさんとアヤと3人で潜りに行く。初めて、海に潜りに行ける事を「やったー!」と思う。ダイビングって楽しい!もっともっと潜りたい!

 遅いお昼を食べた後、アキさんに認定された。「今日からダイバーです。」とカードを渡され、じーんとする。本当に本当に大変だった。苦労した分、感動も大きい。本当に嬉しい。そして、思う。もし、アキさんが今日ではなく、他の日に「まぁ、いいでしょう。」と、ライセンスを取らせてくれてしまっていたら、私は2度とダイビングをやろうとは思わなかったかもしれない。今日じゃなきゃ、私はダイビングの楽しさを知らないままやめてしまったと思う。本当に感謝、感謝です。ありがとうございましたー!

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